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「技術者の協力なくして、技術職採用は成功しない」 過去最大の採用数を出したSansanの担当者に手法を聞く

中途人材が売り手市場と言われる中で、優秀な技術者の採用はますます難しくなっています。

法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」、個人向け名刺アプリ「Eight」を提供するSansan株式会社では、2017年度の中途技術者の採用数が過去最大数を記録しました。急速な事業成長の中で、毎年、採用数を増加させている同社。技術職の採用は、同社の事業成長のためにかかせないと言います。

今回は同社の人事部キャリア採用チームで技術職(エンジニア&クリエイター)採用を担当している藤田裕子氏に採用の取り組みや、自社のカルチャーに合った優秀な技術者を採用するための体制づくりについて伺いました。

藤田裕子氏プロフィール

2009年にパソナグループの技術職専門の人材会社である株式会社パソナテックに新卒入社。東日本営業部にて法人営業を担当後、人事部採用教育グループにてエンジニア・総合職の新卒・中途採用業務に従事する。2015年にSansan株式会社に中途入社。入社から今まで技術職(エンジニア&クリエイター)の中途採用を担当。母集団形成の企画からリクルーター業務まで全て行う。その他、当社内主催の技術勉強会・イベントの企画~運営や外部技術カンファレンスの対応も行っている。現在社会人歴10年目。

技術職採用に必要なのは社内の面接官教育から

ferret:
2017年度の中途採用人数が過去最大数を達成したと伺いました。実際にどのような取り組みをされたのでしょうか。

藤田氏:
中途採用に関しては正直なところ、特に決まった方法があるわけではありません。私がSansanに入社した3年前は部署に中途採用経験者がいなかったこともあり、当時は会社としても採用の仕組み自体がきちんと定まっておらず、事業成長のためにとにかく爆速で良い人材を採用する、という目標を掲げているという状況でした。

採用人数を過去最大にすることができたのは、「あらゆる方法を駆使した」結果だと考えています。当時は様々なエージェントに声をかけたり、評判の良いスカウト媒体を積極的に利用したりと、出来ることは全てやっていたと思います。ただ、「あらゆる方法を駆使した」中でも、次の2点は特に重点的に取り組みました。

それが、「業務イメージの周知」と「応募のしやすさ」です。

そもそも技術職は営業職などよりも、社外の人に会って名刺交換をする機会が少ない職種ですよね。そのため、技術者の方々は個人向け名刺アプリである「Eight」は使った経験があっても法人向けサービスである「Sansan」については存在すら知らないという人がほとんどでした。

存在を知らないということは、もちろん利用したこともないということなので、当然業務イメージもつきません。そのことを解消するために取り組んだのが面接官のトレーニングです。

弊社では現場の技術職が採用面接に参加します。トレーニングによって、面接官である弊社の技術職のメンバーなどが会社のミッションや今後の展望、サービスがユーザーにもたらす価値をしっかりとアピールできるようになったことが大きかったですね。面接の際にはもちろん選考のための質疑応答もしますが、候補者の方に理解を深めて魅力を感じてもらえるように、面接時間の半分は自社についてしっかりと説明するよう面接官にお願いしていました。

ferret:
現場の技術者の方がエンジニアなどの応募者を惹きつける魅力的なトークがどういうものか気になります。

藤田氏:
エンジニアの応募者の方はそもそも「技術を伸ばしたい」という人と「事業にコミットしたい」という人に分かれると思っています。ここの違いによって、どのような会話をするかが大きく変わってきます。

弊社では「事業にコミットしたい」と考える方を採用する傾向にあります。もちろん、技術を疎かにしているわけではなく、個々の技術を伸ばしていくことはあくまでも大前提としてあります。つまりは、弊社のミッションに共感し、事業にコミットしながら、世界を変えるサービスへと成長させていける方と一緒に働きたいということです。

弊社は名刺管理市場を0から作ってきたと自負しており、追いかけるべき先行サービスはありません。したがって、一人ひとりのメンバーが「このサービスはどうあるべきか」「ユーザーにどう使ってもらうのか」というサービスの本質に向き合って日々仕事に取り組んでいます。急激にSansanやEightの利用者数が増加し、ユーザーの層もどんどん変化するチャレンジングな環境の中、事業に対してしっかりとコミットできる会社であることをお話しています。

候補者の志向性と弊社の事業の方向性を合致させることはカルチャーフィットに結びつくため、共通点を面接の中で見つけていくことが「事業コミットできる優秀なエンジニア」採用成功の近道だと考えています。

ferret:
「応募のしやすさ」に取り組んだという点については、そもそも応募しにくい環境にあったということでしょうか。

藤田氏:
Sansanの技術職は30代以上の応募率がもともと高い傾向にあります。一定以上のスキルを持って入社してくる人が多いために「Sansanの技術職にはスキルが高いシニアやミドル層が多い」というイメージがあるらしく、特に若手エンジニアの応募者の中には「どうせ応募しても能力が足りなく落ちてしまう」と思われていたようでした。そのため、昔はエージェントなどからの紹介数が少なく、特に自己応募数も伸び悩んでいました。

そこで若手エンジニア向けの技術勉強会や採用イベントの開催、スカウト媒体からのお声がけを強化したことで、応募しやすい環境を作っていきました。また、エージェントとの関係構築も行いつつ「Sansanは若手を積極的に募集している」ということを丁寧に周知しつづけたことが「応募数の増加」に繋がったと考えています。ここでもエンジニアが採用活動や社外向けイベントに積極的に関与してくれてとても助かりました。

採用に結びつけるためのダイレクトリクルーティングの強化

藤田氏:
もちろん、採用は応募数の増加だけではうまくいきません。応募者の増加を採用につなげられた一番の要因はダイレクトリクルーティングを強化したことが挙げられます。

私がSansanに入社した3年前の採用比率はエージェント経由が8割なのに対し、ダイレクトリクルーティングはわずか2割程度でした。エージェントの利用によって、母集団は多く集めることができていたのですが、採用に結びつく割合はとても低かったのです。

そこで効果的なスカウト媒体を使ってこちらから声をかけたり、社内のリファラル採用などの比重を増やしていきました。

こうしたダイレクトリクルーティングで特に意識したのが技術職メンバーの協力です。

例えば、スカウト媒体の利用では候補者の選定からスカウト文の作成までエンジニアやクリエイターや部署ごとの社員に協力を仰いだほか、CTOやエンジニアリングマネージャーが直接スカウトを打つ、ということもしました。ダイレクトリクルーティングの強化と現場メンバーの協力によって、志望度の高い候補者が選考に残るようになり、採用数の増加に繋がったと考えています。

ferret:
ただ、技術職のみなさんは人事の経験が少ない方が多いように思います。自社の魅力をアピールしたり、欲しい人材を口説き落とすのには苦労しそうです。内定承諾に至るまでにどのように技術職の方々に面接官としての教育をされたのでしょうか。

藤田氏:
まずは、やはり人事にエンジニアやクリエイターの技術や文化がわかる人材が必要です。先ほど言ったように、Sansanでは1次面接から現場メンバーやエンジニアが参加します。そのために自社の魅力をしっかりとお話できることなど、面接に来た方にSansanをどう伝えられるかが重要になります。

弊社では昨年、エンジニアが人事部に異動してきてくれました。その社員に人事の役割などを勉強してもらい、どうすれば弊社のカルチャーに合ったエンジニアを採用できるかを考えながら体制作りを進めてもらっています。

エンジニアのメンバーが人事部に入ったことで、人事担当者がわからない技術面が測れるようになり、意思決定が早くなったことは大きかったと思います。

エンジニアが採用に取り組むことは社内にも好影響を与えています。Sansanのテックカンファレンスの実施や弊社主催の技術勉強会の頻度が増え、弊社の技術ブランディングの強化にも繋がっていますね。

人事担当者は常に現場メンバーの近くにいることが大事

ferret:
やはり技術職など各部署現場メンバーの協力が鍵になっているのですね。

藤田氏:
私自身、業務時間中は極力エンジニアやクリエイターの近くの席を借りて、作業をしたり、部会に参加したりするなどの取り組みも行っていました。彼らの仕事風景や聞こえてくる会話を通して、具体的にどういった人材がマッチするのかを肌で感じるためです。

自社のカルチャーに合った優秀な技術職を採用するために、採用担当者は極力エンジニアやクリエイターと密にコミュニケーションを取ることが重要だと思います。席を近くしたり、部会に参加したりするだけでなく、MTGの回数を増やす、Slackでチャンネルを作って何でも質問できるような場を設ける、などオンライン・オフライン問わずコミュニケーションを図る機会を作っています。

また、信頼関係構築のために、私の基本スタンスとしては、現場メンバーから質問されたことにはすぐに答えるようにし、お願いされたことは頭ごなしに断らずに、一旦受け入れて一緒にやってみるなど、常に寄り添う立場でいることを心がけています。この小さな積み重ねが現場メンバーの協力体制の強化に繋がっているのではないかと思っています。

採用という私の仕事は、現場のエンジニアやクリエイターの協力なしでは成立しません。市場競争も激しい中で、技術者の思いや仕事の現状などを都度理解しながら進めていく必要があるため、採用するのが非常に難しい職種です。そのために現場社員とのコミュニケーションの密度をあげることを重要視していますし、こうした取り組みを楽しみつつ、大きなやりがいも感じています。

他にも、技術者向け勉強会の主催・運営等を行う際には、技術者の価値観をしっかりと知ることや、人事からのアクションを増やすよう心がけています。

全ポジションの全選考官を対象に研修を実施

ferret:
Sansanの中途採用のポジションでは技術職だけでなく、その他の職種の募集も多くされていますよね。

藤田氏:
各ポジションでは人事以外の部署で面接官になる方がいます。中途採用に関わる、そうした対象者全てに半期に1度、面接官の心得研修や面接対策シートの改善を実施しています。

現在は技術職だけで約50人が研修対象になるなど、全社的に採用に取り組んでいますね。また、技術職だけでなく、各部署やポジションごとにミーティングを開くことで、「採用は事業成長を加速させるために重要なもの」という意識を持ってもらい、全ての社員に自分ゴトとして捉えてもらうことも大切にしています。研修では自社の魅力が伝わりやすい話し方など様々なレクリエーションを行いました。

このような取り組みのおかげで全社的な協力体制ができてきました。

今後、採用を社員全員が自分ゴトとして捉えられるかが、会社の事業成長にも繋がる重要なポイントになってくるのではないでしょうか。

高橋佳久

高橋佳久

インドネシアやタイなどの邦字紙で編集者・記者として従事。2018年からferretでエディターとして記事を編集・執筆しています。

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