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採用マーケティングって結局何?「人事がマーケター」と呼ばれる理由

人材の獲得が難しくなっていると言われる中、企業が求めている人材を得るためには「採用マーケティング」の思考が必要です。しかし、「採用マーケティング」という言葉は聞いたことはあっても、具体的にどのように採用を進めていくべきなのかイメージできている人事担当者は多くないのが現状です。

そこで、IT・Web業界に特化した求人情報サイト「Find Job!」を運営する株式会社ミクシィ・リクルートメントの代表取締役社長 鈴木 貴史 氏と、ferret Founding Editorの飯髙 悠太が「採用マーケティング」をテーマに対談しました。

「欲しい人材」を獲得するための「採用マーケティング」とはどのようなものなのか、数あるツールをどのようにして使っていくべきなのかなどについて語った様子をお届けします。


鈴木 貴史 プロフィール

鈴木 貴史

1986年生まれ。関西大学工学部出身。大学卒業後、エン・ジャパン株式会社に入社、営業や新規事業の責任者として幅広い業務を経験。その後株式会社ミクシィに転職、経営企画に携わった後に株式会社ミクシィ・リクルートメントに出向。半年後には社長に就任し、数年間業績が低迷していた求人情報サービス「Find Job!」のV字回復を成し遂げる。


そもそも「採用マーケティング」とは

鈴木 貴史

飯髙:
まずは鈴木さんが考える、「採用マーケティング」について教えてください。

鈴木 氏:
「採用マーケティング」とは、採用に関わる人事や経営メンバーが、事業戦略を実現するための採用戦略を練り、実行することだと思っています。採用をよくある「手段と目的」の話に置き換えると、まさに手段と捉えた時に、事業戦略実現のためにはどういう採用をするのか、もしくは採用をしないで解決する方法はないのか?を一度立ち止まって思考しても良いと思っています。採用の目的は事業戦略の成就ですからね。

だからこそ、トップから「こういう人が欲しいんだよね」って話がきた時に、いかにそれを噛み砕けるかが重要です。

経営判断としては、事業をこうしたい、そのために人を増やす・足りないスキルを補給する、というロジックがあって採用のオーダーを出します。それを社外調達なのか社内調達なのか、社外調達であれば正社員で採用するのか、業務委託なのかアルバイトなのか、どれを選ぶかは採用に関わる方に委ねられています。

トップから「正社員が欲しい」と言われた時に、「それって業務委託でもいいですし、こういう職種や形態であれば、その戦略は実現できますよね?」って話をトップとできるのが理想です。

欲しい人材を獲得するためには、企業の採用ブランディング、人事の稼働量、使う媒体の集客力っていう3つのKPIを追うことが常識のようになっていますが、ここに目が行ってしまうと人事部門でコントロールしやすいかつ即効性のある「人事の稼働量」のみで解決できる施策がメインとなります。そうすると、必然的に人海戦術になってしまいます。採用オーダーが出た際に一歩立ち止まって、その思考をガラッと変えてみる。事業戦略のように一見アンコントローラブルなものにあえて干渉することで、適切な採用戦略が実現実行できると考えています。

飯髙悠太

飯髙:
言葉の定義としては、今までやっている採用の仕方自体がもう枯渇しているのかなと思っていて、だからこそ「採用マーケティング」って言葉が生まれたのかなってのはありますね。

鈴木 氏:
今って、手軽に使える採用ツールがたくさん増えましたよね。人材業界は参入障壁がめちゃくちゃ低くて、異業界からの参入に加え、スタートアップがキャッシュつくるために始めたりしている状況からもわかる通り、誰でも始めやすい環境ですし、おいしい領域と思われています。人材紹介の免許は申請と多少の自己資金があれば簡単に取れますし。

だからこそ人事からすれば、使うツールが非常に多いという状況が起きていますよね。この採用ツールの供給過多は結果として、目的のためにどのツールをどのように使うのかが重要っていう今の状態をさらに悪化させていくでしょうね。

飯髙:
そこがまさにマーケティングと一緒ですよね。どこのチャネルに人が属していて、Twitter、Facebook、Wantedlyなどプラットフォーマーも複数ある中で、どこに自分たちのターゲットがいて、そこに向けてどのようなメッセージを発信するか。

鈴木 氏:
その戦略作り自体が「採用マーケティング」というような感じですね。

飯髙:
確かに。だからこそ、「人事もマーケターだ」って話をよく言うようになっているのかもしれませんね。

でも僕の感覚だと、人事の方がコンバージョン(応募)があったポイントを「部分」で見ているなってイメージもあるんです。先ほど言っていた様々なチャネルがある中で、例えば「Find Job!」で求人を見た後にほかの媒体の求人も見て、色々見た結果、別媒体からコンバージョンする場合だってあるじゃないですか。こうなった時に、最初のポイントである「Find Job!」の貢献ポイントを無視しているようなイメージはあります。最終出口だけ見ているような。

本当にマーケティング目線で見るのであれば、この貢献ポイントも見られるようになればおもしろいのになって思いますね。


多様化する採用ツール、どれを選ぶべきか

鈴木貴史

飯髙:
採用に使えるツールが多すぎて、どれを使えばいいのかわからないって企業も多いと思うんですよ。

結果としてひとつを選ぶものではないですが、これらのツールはどうやって選んで使い分けていけばいいでしょうか?

鈴木 氏:
「採用要件」を意識するのが大事ですね。理想を言うと、企業戦略、事業戦略、採用戦略、の3つのフレームワークがツール選定に有効だと思っています。

企業戦略として中長期計画でどこを目指すのかって話がありますよね。そのためにこの事業を何億にしよう、この事業を立ち上げよう、って話があります。そのために必要な能力・スキルは何で、どういう人材で補えるのか。

ここのストーリー設計がどれくらい精密にできているかは気になるポイントです。これができていれば、採用マーケットにオーダーがあったものをそのまま放り込むってことはないはずです。欲しい人材がいるところ、採用できるところに意図的に出したり、他社と競争しない独自の手段をとれるようになるんです。

例えば、事業戦略として今は成長期なので事業をどんどん伸ばしていこうという場合、仕事はルーティン化されている場合が多いはずです。このフェーズだと、能力値よりもカルチャーにマッチしている人材を採用して教育する方がコストが安い可能性もあります。

そうすると、採用戦略に関しては、新卒だったり、第二新卒だったり、ジュニアクラスを採用してポテンシャル採用に切り替えた方が良いこともあります。そこから採用要件をどんどん落としていった方がいいんですよね。

これって結局人事部だけでできることではないので、経営者や事業部長を巻き込む必要はあります。巻き込み方としては、「当社の企業戦略は何で、事業戦略は今後どうしていくのか、それを実現する採用戦略には何が必要か」という問いを経営者・事業部長・採用担当との3者間で議題にするのが最も良いと思います。

「とりあえず出す」は効果が出にくい

飯髙:
欲しい人材が見えてきて要件も固まってきた。そこまできたらどうやってツールを選ぶべきですか?

鈴木 氏:
自分は仕事柄、人材サービスのマッピングをよくやります。マッピングを人事の方もやってみると使うべきツールがわかってくるかと思います。

よく企業の方に、「どういう人材を取りたい時にどの媒体を使いますか?」って聞いてみると、明瞭な回答が得られるケースは少ないです。相当分析好きな方であれば別なんですが、採用ツールがありすぎて「これだ」という採用手法をとれている企業のほうが少ないのは当然だとは思いますが……。「採用できそうだから、ほかの会社も使っているので求人をとりあえず出している」という回答が多いですね。多くは流行りの媒体に行きがちですが、そこは相性やスキルも必要になることもありますから。

マッピングをして、採りたい人材がいるツールを見極めると採用も変わってくるのではと思います。

飯髙:
その辺はWeb広告の出稿戦略とも似ていますよね。「とりあえず出す」になりがちな部分とか。自社が採用したい人に対して、適切なツールを選ぶところは、まさにマーケティング思考が必要な部分ですね。


採用におけるPDCAサイクルの回し方

飯髙悠太

飯髙:
これは採用に限った話ではありませんが、どのような事業においても施策を実施したら成果を見ながら改善点を探していくPDCAサイクルを回していく考えがありますよね。それは採用の場合はどのようにやっているのでしょうか。

鈴木 氏:
採用においては、「どこが障壁になっているかを確認して改善する」という話でしかないと思っています。採用もマーケティングと一緒で、リーチから始まって集客をして色々なフローを経てコンバージョンに至ります。具体的に言うと、複数の媒体やエージェントを利用して集客して、書類選考や面接、内定承諾のフローを経て採用ができます。

もしも問題が起きている場合は、必ずこの工程のどこかが障壁となり歩留まりが低い状態になっているんですよ。

例えば、我々の会社でも、「内定承諾」が取れない時期がありました。その原因を考えてみると、提示している年収がネックになって承諾に至っていなかったんですね。

ただ表面だけ見ると「年収を高く提示する」ことが解決策に思えるのですが、それだけでは解決策としてはナンセンスです。年収をあげるのは手っ取り早いですが、いつもできることでもありません。

この問題の根本は、「狙っているスキルを持った人材自体が、自社が想定する年収よりも高額である人である」ことや「そもそも想定よりも高額な求人者しか集まらない場所に求人をかけている」場合など、必要とされる人材に対して、アプローチ方法が間違っていたり、募集要件そのものが適切でなかったりすることなんです。そうした場合、採用要件や集客するツールを変えた方が必要とする人材に出会える確率が高まります。

ただ「年収がネックで内定承諾が取れない」ではなくて、もう一歩踏み込んで考えてみると、そもそも出会う人材を間違えているのだから集客の方法を変更するべきと気付くことができます。

飯髙:
結構そのあたりはうまくいっていない企業が多いですか?

鈴木 氏:
そうですね。苦労している企業は多いと思います。うまくいっていないケースでは、上からオーダーされたマストな採用要件を何が何でも集めようと、頑張って市場にリーチしている状態になっています。すごく工数を必要とする分、そこに自分の解釈や咀嚼を持つ余裕もなくなってしまうので、ただただ「稼働量を増やしている」という状態に陥ります。結果として、内定タイミングで別の企業に人材が取られてしまったり、そもそも集まらなかったりしています。

これは求める人材がいない市場、もしくは勝てない市場に対して商品を投下しているような状態です。

なので、もし採用がうまくいっていない場合は、どの工程が障壁になっているかを理解して、PDCAを回していくことは必要でしょうね。

人事はもっと新しいものを取り入れるべき?

飯髙:
僕も色々な企業と関わる中で、採用にうまくいってない企業は昔と同じことをずっとやり続けているところが多いです。新しいことを取り入れないというか。

人事の方ってあまり外に出ないイメージがあります。もっと外に出て、他の企業から話を聞く機会があってもいいのかもしれません。

鈴木 氏:
採用のエージェントがいる意味ってもしかしたらそこにあるかもしれないですよね。あとは採用代行とか。人事の方々が使うツールはどんどん新しくなっていくのですが、求人事業者側でイノベーションを起こせていないため、採用手法は昔から同じというケースが多いですよね。


人事が楽できるツールとして「Find Job!」を使って欲しい

鈴木貴史

飯髙:
Find Job!は、他のツールと比較した時にどの点が強みなんですか?

鈴木 氏:
「Find Job!」はIT・Web業界に特化した求人媒体です。Webデザイナー、グラフィックデザイナー、WebエンジニアなどIT・Web業界の技術者やクリエイターをメインに採用できる点が強みですし、ジュニアクラスの転職やジョブチェンジも得意としています。特に「採用ブランディングが確立されていない企業でも採用できるツール」としてご利用いただいており、社名やプロダクト名で引っ張らなくても採用ができる点は独自性になっています。

「Find Job!」を利用している求人企業はその多くが従業員規模50名未満です。この規模の求人企業にとって人材不足は本当に死活問題なんです。制作や開発の受託会社や事業会社など業態は多岐にわたりますが、小規模の企業さんにずっと使っていただいていることを考えると、戦力になる技術者やクリエイターをちゃんと採用できているという強みはあると思います。

飯髙:
強みの1つであるジュニア層だと、まだ自分の力で転職することが難しい場合が多いと思うのですが、どうやって企業と求職者のニーズをマッチングしているんでしょうか?

鈴木 氏:
ジュニア層は経験がしたいんですよね。大企業で高待遇を狙っているのではなく、実務経験が欲しい。それに対して、企業側も高待遇や知名度は提供できないかもしれないけど、そのような人たちに経験の場を提供できる。そのニーズがマッチしていますよね。

採用ブランディングに依存しない、エンジニア・クリエイターのジュニアクラスの人材採用には定評がありますので、どんどん活用していただければなと思っています。


まとめ:なぜその人材が必要なのかを落とし込む

売り手市場と言われるいま、「採用」に苦戦している企業は少なくありません。とはいえどの企業も、「誰でもいいから採用したい」と考えている訳ではないでしょう。

自社に必要なのはどのような人材なのかを正しく把握するためには、企業戦略、事業戦略、採用戦略のストーリーを設計してみると良いでしょう。自社の成長や事業に必要なスキルがわかれば、自ずと「本当に必要な人材」が見えてきます。

必要な人材を把握した上で、その人材が獲得できるツールはどれなのか、自社に適しているツールはどれなのかを検討してみましょう。

岩﨑美樹

岩﨑美樹

テクノロジーやWebサービスを紹介するメディアにて執筆を経験。2018年株式会社ベーシックに入社。「誰にでもわかるWebマーケティング」をテーマに記事を執筆しています。

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