Original

「必要なのは人間力」 ニュートンが語る、実店舗ビジネスに求められるIT人材

IT人材が必要なのは、なにも「IT企業」だけではありません。

飲食や小売、旅行、教育、農林水産業……どのような職種であっても、IT人材は必要な時代だと言えるでしょう。

とはいえ、ただでさえ「IT人材が足りない」と言われている今、IT企業以外はどのようにIT人材を獲得しているのでしょうか。また、どのようなIT人材がこれらの業界に必要とされているのでしょう。

そこで今回は、カラオケ・レストランなどの実店舗を数多く運営し、IT人材の採用に力を入れている株式会社ニュートンに、「実店舗ビジネスに求められるIT人材と獲得するための工夫」についてお伺いしました。


プロフィール

荻野・長尾

荻野 佳奈子

株式会社ニュートン HRAチーム 室長

2006年 成城大学卒業。新卒では社員5名のスタートアップベンチャーへ入社。人事・営業・企画など幅広い職種を経験。2008年にニュートンへ。現場配属となり、ホテル事業部・ウェディング事業部・飲食事業部などを担当した後、2017年より人事責任者(HRAチーム)に着任。グループ社員・キャスト4000名の採用から育成まで各種人事業務を担当する。

長尾 達樹

株式会社ニュートン Webマーケティングチーム  宣伝制作チーム 統括責任者

大学卒業後、ミュージシャンとしての活動を経て、2014年に株式会社ニュートンに入社。インハウスWebデザイナーとして、運営する各ブランドサイトの制作やリニューアルを担当。Webマーケティング業務にも携わり、2016年にWebチームの責任者に着任。2017年からはグラフィックデザインチームの責任者も兼任し、チームのマネジメントやクリエイターの採用を担当している


必要なのは柔軟に対応できるIT人材

長尾

ferret:
昨今IT人材不足が叫ばれていますが、IT人材を必要としているのは、IT企業だけではありません。まさにニュートンさんのように実店舗をいくつも経営しているような業界では、どのようなIT人材を採用しているのでしょうか?

長尾氏:
弊社ではマーケティング戦略室という部署があります。その中にWebの部署とグラフィックデザインを担当する宣伝制作の部署がありまして、そこでIT人材を採用しています。

弊社のインハウスデザイン部署の特徴として、店舗で使うツール全般のデザインを担っていることが挙げられます。例えば、販促POPやチラシ、パンフレット、店内でお客様をご案内するサインなどですね。他にも、看板デザインや壁面デザインなど、グラフィックデザインの領域で幅広くデザイン制作を行います。オフィシャルサイトや広告LP等のWebに関しては、Web専門のチームで制作を行っています。

IT人材の採用に力を入れているのはグラフィック・Webの2チームですが、そこに加えて、社内インフラやPOSの導入などを整備するシステムチームがあり、その3部署でIT系の人材を採用しています。

ferret:
店舗のデザインを含めて幅広くやっているのは、店舗経営をしている事業ならではですね。そういったIT人材を採用するときに、どのようなことを重視しているのでしょうか?

長尾氏:
一般的なIT人材の採用基準とはちょっと異なるかもしれませんが、ある程度の作業スキルがあれば、あとはブランド理解や業態把握の方が重要なポイントです。弊社の場合、ひとつの業務をひたすらというよりは、様々な業務を担当してもらう必要があります。なので、何かに固執することなく、「今までは〇〇を経験をしてきたから、今後は××のようなことに取り組んでみたいです」というような、フットワークが軽く動けるようなことの方が大事なのかなと考えています。

荻野氏:
これについてはIT人材に限ったことではないのですが、弊社は「20業態、100店舗やっています」というような企業です。グループ全体で会社数も多く、いわゆるIT業務というのも、縦割りで各社専属ではなくて、「ホテルもやるし、飲食もやるし、採用ページも作るよ」というような状態なんですね。特化してこれだけやっていればいい、システムだけ見ていればいい、といった環境ではありません。なので採用するときも、「スペシャリストとして同じことをずっとやり続けたい」という考え方よりは、「チャレンジしてみたいんです」というキャラクターの方が弊社にはあっているのかなと。例え今はスキルが足りていなかったとしても、補える環境は整っていますから。

実際に弊社では、店舗のサービス担当として採用した社員が「IT系にキャリア転職したい」と声を上げて、努力してIT担当になる社員もいるぐらいなんですよ。

ですので採用するときも、そういったキャラクターの人材を求めていますし、「努力すればキャリアチェンジできる」というのも会社の特色なのかなと考えています。

誰もが声を上げられる社内転職制度

ferret:
「キャリアチェンジ」というのは社内で制度化されているのでしょうか?

荻野氏:
弊社ではキャリアチェンジできる仕組みを「社内転職制度」と呼んでいます。転職したい理由は様々だと思いますが、「会社が嫌いなわけじゃないけど、違う仕事をしてみたい」ってことはあると思うんです。例えば、「今やっている24時間営業のサービス業よりは、もうちょっと専門的な仕事をしてみたい」という場合に、「転職」の形をとらなくても社内にその入口があるから試してみればいい、とスタートしたのが「社内転職制度」です。

社内で部署移動をしようと思っても、「先輩や上司の目が気になって声を上げられない」ってこともありますよね。そういったことを飛び越えて社員の意見に気が付いてあげられる仕組みは、ここ数年強化している部分でもあります。

採用の時に、「色々やってみたい」という社員に対して社内転職制度の話を持ち出すこともよくあります。「2年働いて別にやってみたいことがあれば、また社内で別のチャレンジができるよ」という提案ができるので、間口を広げるきっかけになれているかなと思いますね。

Webはひとつの手段でしかない

長尾氏:
自分の部署でIT人材を採用するときも、「目の前の作業に没頭したい」というよりは、社内転職制度に食いついてくる様な、先を見据えている人材の方がマッチしているのかなと思います。例えばWebであれば、パズルを完成させる様な感覚で「ページをゼロから作りたい」という方が非常に多いんですね。でもそれだと、「Webページを作る」という手段を追い求めていることでしかないんです。

それよりも「それをやることで、お客様により使ってもらえるツールができる」というところまで追いかけられる方が重要なんです。それができるかできないか、というのは面接で重視して見ていくべきことなのかなと思いますね。


候補者の「人間力」や「可能性」はどう見抜く?

荻野・長尾

ferret:
ニュートンさんは採用ページで、「ニュートンの採用は『人間力』」というキャッチコピーを掲げていらっしゃいますよね。学歴や職歴にとらわれない採用はおもしろいと思う一方で、その「人間力」というのはどの様に判断しているのかが気になります。

採用候補者と話していく中で、人間力やその人の可能性をどの様に判断しているのでしょうか。

参考:
中途採用 | 株式会社ニュートン【新業態開発企業】

長尾氏:
難しいですが、僕の部署でも最初はスキル面の確認も重視はしていたんですね。けれども実際に会社に長く残ってくれて、本当の意味での戦力になる人材というのは、スキルよりも「問題解決を念頭に置いているか」というマインドの部分が重要だということがわかりました。

最近は面接でスキルの話をするよりも、会話をしてその人独自のエピソードを話してもらうことに力を入れています。そこでどの様なエピソードを話してくれるか、どこまでそのエピソードに対して話してくれるか、が重要なんです。「こんな失敗をしちゃいました」で終わる人も入れば、「失敗と改善、次にどの様に繋げるか」まで話してくれる人もいます。そのエピソードをどう話すかで、その人がどの様な人間なのかがよくわかってくるんです。

荻野氏:
ちょっと変な言い方をすると「辛かった会社のエピソードを楽しく語れる人」が好きなんです。転職する時って、給与だったり労働環境だったり、何かしらの理由があって転職しますよね。なので「どうして転職するのか」という話は必ず聞くようにしています。そのときに今の仕事の不満で終わるのか、仕事は楽しかったんだけどこんなことがあってと話すのかで全然違ってくると思うんですよ。その話から「仕事を楽しくするために、自分でどんな努力をしてきたのか」がわかります。

長尾氏:
原因他人説になるのは、あまりよくないのかなと。前職の話をするとそこがよくわかるんですよ。上司の悪口だけで終わっちゃうと、「将来自分も言われるのかな」って思ってしまいますし(笑)

弊社は遊び開発企業と謳っていますので、楽しいことを見つけてそれを盛り上げていく力は、部署に限らず必要な力です。なので面接で会話をしながら、「原因他人説になっていないか」という部分は重視して見ているところですね。


ミスマッチを防ぐための体験入社

長尾

ferret:
採用プロセスは全社共通で決まっているのでしょうか?

荻野氏:
基本的には書類審査にプラスして面接が何回か入るのですが、部署によって少し異なりますね。

長尾氏:
Webやデザインの部署だと、体験入社を実施することも頻繁にあります。例えば、具体的な仕事の内容が思い描いていたものと違う、なんてことがあるとミスマッチになってしまいますよね。それで入社後いきなり辞めてしまわれるよりも、体験入社期間を設けて実際に業務をしてもらった上で判断した方が、お互いにとってプラスです。

すべてではないですが、5日間ほど働いてみて、一緒にランチへ行って「やっていけそう?」と話をして、お互いが納得した上で入社というパターンは多いですね。

ferret:
体験入社を取り入れてから、ミスマッチが減ったと感じていますか?

長尾氏:
そう思います。さらに加えると、「サイレントクレーム」のような形になる前に、問題が顕在化するようになったなと感じています。体験入社によって入社前のコミュニケーションの機会が増えるので、お互いが不満を持つ前に声を拾えるようになったというのは大きいですね。もし体験入社で思っていた仕事と違ったとしても、その時点でわかれば別の仕事を提案できることもありますからね。


リアルなお客様の声が聞けるIT人材に

荻野

荻野氏:
「弊社はどこでマネタイズしているのか」と言ったら、やっぱり飲食なんですよね。お客様がカラオケしてくれる、パセラで「ハニトー」を食べてくれる、それで初めてお金になるんです。そこに帰結するための店舗があり、その店舗を回すための制作ツールがあり、入り口となるWebがある。そうやって考えた時に、「システム改善をした」「PVが上がった」、だから評価してくれ、というビジネス構造にはならないんです。

小さなお子様からおじいちゃん、おばあちゃん世代まで。30分300円のカラオケから、1泊2名様で10万のホテルまで。リアルなお客様の声を拾えるのが弊社の面白みだと思います。

本質的なIT人材ではないのかも入れませんが、「IT人材にもなりたい」人とか。もうちょっと広い視野で見ていけたらいいのかなと思いますね。


まとめ

今回は、ニュートンの人間力を重視したIT人材採用についてお話を伺いました。

ニュートンでは、自社に必要なのはIT人材像を明確にし、求める人材に来てもらうために入社前に積極的なコミュニケーションをとったり、体験入社制度を活用したりしています。また、入社後もキャリアチェンジ制度を設けて、チャレンジ精神旺盛な社員が活躍できる場を増やしています。

もちろん企業により求めるIT人材像は異なりますが、IT企業以外が求めるIT人材を獲得する手段として、今回のお話は参考になるのではないでしょうか。

岩﨑美樹

岩﨑美樹

テクノロジーやWebサービスを紹介するメディアにて執筆を経験。2018年株式会社ベーシックに入社。「誰にでもわかるWebマーケティング」をテーマに記事を執筆しています。

中途入社予定者フォローの必要性と3つの例

2019-08-19 18:16

内定後から入社までの期間をどのように過ごすかで、その人の入社に対する熱量は大きく変化します。実際に、多くの企業は新卒の内定者に対し、懇親会や内定式といった様々なイベントを企画されています。 しかし、内定をもらった中途入社の方に対し、そのような機会を設けることはあまりありません。そこで今回は、中途入社予定者に対する入社までのフォローの必要性と具体例を紹介します。

『エバンジェリスト』とは

2019-08-16 10:26

エバンジェリストとは、IT業界においてテクニカルエバンジェリストとも呼ばれ、テクノロジーの情報や自社サービスのことを、社内外に分かりやすく説明する、エンジニアとマーケターを合わせたような職種です。もともとエバンジェリストとは、キリスト教における福音主義(evangelicalism)からきており、福音(良い音信)を伝える人を指します。

『アルムナイ』とは

2019-08-08 09:30

アルムナイとは卒業生や同級生を意味する英単語「alumnus」の複数形「alumni」が語源になっています。ビジネス界においては、企業から卒業した人、つまり退職者のことを指します。 海外では主流の考え方の1つで、ハーバード大学、オックスフォード大学などはアルムナイに向けて、イベントを企画したり、アルムナイしか買うことのできないグッズを制作したりしています。 外資系コンサルティング会社アクセンチュアでは、アルムナイに対する様々な制度を設けています。具体的にはインターネット上にクローズドのコミュニティを作り、そこで情報共有を行ったり、スキル・人脈をシェアしたりすることができます。所謂オンラインサロンのような役割を担っているのです。

採用に役立つ!? 企業が副業を導入するメリットと注意するべきポイント

2019-08-06 10:32

2018年から政府の方針として、『副業』が解禁されるようになりました。 リクルートキャリアの調査によると、副業や兼業を容認している企業は、まだ約3割と少ないですが、これからより副業が推進されていくことが予想されます。 現在副業をする側に焦点がいきがちですが、企業としても副業を導入しなければならない体制を整えなければいけません。 では、副業をする上でどのようなメリットがあるのでしょうか。 今回は企業が副業を導入するメリットと注意するべきことを採用と照らし合わせながら、紹介します。

『リアルタイムフィードバック』とは

2019-08-01 10:51

リアルタイムフィードバックとは、一般的に四半期や半年に1回実施する人事評価を、1週間や2週間に1回という高い頻度で行う評価制度のことです。 従来のフィードバック面談と異なるのは、『リアルタイム』という点です。フィードバックする頻度を高めることで、より的確な評価を出すことができたり、上長とのコミュニケーションを増やしたりすることができます


人気記事ランキング

© Basic Inc. All Rights Reserved.