全社採用で人事の役割はどう変わる?「採用オーナー制」を実践するラクスルの取り組みに迫る

「採用は人事が行う」という固定観念はありませんか。ラクスル株式会社は、自分の所属するチームに新たなメンバーが必要な時は、その人が「採用オーナー」となり、採用活動を行っています。もちろん同社には、人事専門のスペシャリストがいます。

しかしあえて、他の社員も採用活動に取り組んでいるのです。それぞれの業務があるなか、なぜ採用オーナー制度をとっているのでしょうか。そのメリットと、今後についてお伺いします。

笠置 由子氏プロフィール

2006年ぐるなびに入社。人事部で新卒採用、中途採用、人材育成、研修、特例子会社の立ち上げなどを経験。その後、営業推進へ異動し、WEBコンテンツの企画担当として、新規コンテンツの企画、リニューアルに加え、リアルイベントの企画運営も行う。2014年からはJR東日本に出向し、Suica電子マネーの利用促進、導入促進に向けたプロモーションに携わってきた。
2017年1月にラクスル入社。人事総務部に所属。中途採用を中心に採用広報、社内イベントの企画などに関わる。

全社で採用を行う会社?

ferret:
御社の採用は、人事が一括で採用するのではなく、社員も採用に関わるようですね。

笠置氏:
そうですね。例えばマネージャー職のメンバーを採用したいのであれば、担当事業部の部長が採用オーナー(採用におけるリーダー)となり、スカウトを行っています。

ferret:
評価制度の中に採用の項目を入れたと伺いました。

笠置氏:
採用は部門の目標でもあり、評価にも反映されます。
弊社では創業時から「一人の優秀な人材が、会社の未来を変える」と採用に力を入れ、役員自らが自社の魅力を伝え、仲間を増やしてきました。そのような背景から、当社の採用では、各部門がオーナーシップを持ってスカウトから内定承諾までを一貫して行います。

人事は、各部門の採用ニーズに応じた予算管理、求人情報を出すスケジュール調整、面接日程の調整といったオペレーション業務を担当。ほかに、各部門の採用に向けたアクション(スカウト送信数、返信率、面接数など)をデータ管理し、部門ごとに数字で振り返って対策を取れるように、社内周知を進めます。

ferret:
するとオーナーによって、採用率が変わってくる訳ですね。

笠置氏:
そうですね。もちろん採用チャネルの対象も異なりますし、応募数、通過率も違います。

ラクスルのオーナー主導の採用方法のメリットとは?

ferret:
採用を開始するときは、どのように進むのでしょうか?

笠置氏:
採用枠の定例会議を月に一度行っております。

役員や各部の部長がいる場で、採用オーナーが、新規で採用開始したいポジションについて、プレゼンを行います。承認が得られると、そのポジションの採用を開始することができるようになります。

ferret:
採用オーナーが社内プレゼンをしてまで採用する。そのメリットは何でしょうか。

笠置氏:
採用オーナーが当事者意識を持って採用に関わることで、入社者に対して「自分が選んだ」というオーナーシップが生まれ、会社にフィットさせようという意欲が高まります。

おそらく、人事が一括で採用を行い、現場はその人と顔を合わせないまま人がアサインされて、入社後に育成をしていく。「自分が採っていないのに」と思いながら育成をしている会社もあると思います。

弊社では、採用オーナーが入社者と直接コミュニケーションを取っているので、どのタイミングでどんなスキルを持つ人が入るかがわかっており、入社後にどの仕事をお願いするかの想定ができます。配属となる部のメンバーへも事前に共有しておくことが可能です。そうすることで、入社者に必要なものなどを先回りして準備することができ、万全な状態で入社者を迎えられるのです。

業務に良い影響が多く、組織の活性化に直結していると思います。

入社後にミスマッチが起こるのは、本人にとっても会社にとっても不幸なこと。まだまだ小規模な当社にとって一人の影響は絶大なので、全社で「本当に一緒に働きたい人を採用する」ということを徹底しています。

入社者も自身がこの会社でどういうミッションを持って、どういう風に活躍できるかのイメージがインプットできているので、戦力になるのがとにかく早く、入社後のミスマッチも少ないです。

他社が行う場合はどうすればいい?

ferret:
人事ではないのに採用業務を行うことに対して、社員の方はどう受け止めているのでしょうか。

笠置氏:
「現場がこんなに採用に関わるのか」と驚かれる方がほとんどかと思います。

ぜひ入社いただきたい方に対して、オーナーだけではアトラクトしきれない時は、その部の上司が。場合によっては更に上の、取締役がアトラクトすることもあります。

全員が採用を経験しているからこそ、サポートできる点が弊社の強みですね。

ferret:
この採用の方法を他の会社が実施場合、どのようにすればいいと思いますか?

笠置氏:
人事だけではなく上席にあたる方々が「事業成長のためには採用が最重要である」という意識を持つことが必須だと感じてます。

ferret:
トップやマネージャー陣が、人材に対して理解がある会社ではないと難しいというところですね。
採用がうまくいっている採用オーナーは、どのような特徴がありますか。

笠置氏:
採用ができるオーナーは、圧倒的な行動量と、それをやり続けることができる人だと感じています。

採用オーナーは自分の事業部のミッションがある中で、プラスで採用活動を行っています。そのため一定期間スカウトをして採用活動を行ったが、採れない場合、採用の行動を緩めて本来のメイン業務に戻るのは当たり前のことだと思います。
それでも、どれだけ大変な状況でも、最後まで当事者意識をもって、一緒に働きたい人材に出会えるまで採用を行ってます。

採用ブランディングの方向性

ferret:
人事的な動きを全社員がとっていく中で、採用に対する意識や流れも変わってきたのではないでしょうか。

笠置氏:
おかげさまで事業も増えて、採用のポジションも増えてきています。それに伴って応募数が増え、採用のアシスタントや担当者も少しながら増えているというのはありますね。
またイベントなどを行い、採用ブランディングに力を少しずつ入れていけるようになりました。

ferret:
具体的にはどのような採用ブランディングをされているのでしょう。

笠置氏:
ここも弊社の強みだと思うのですが、採用広報の担当者がいないからこそ、採用オーナーや取締役自らが担当領域のブランディング価値を向上させる取り組みを行っています。
例えば、採用で同じようなポジションの方を求めているスタートアップの企業様と一緒に、ミートアップのイベントを企画し開催。それを後日イベントレポートとしてを記事化し、拡散しています。その他には、採用チャネルとして使える媒体さんと組ませていただき、自社の情報を記事として届けつる取り組みも行っています。

ferret:
イベントはどのようなテーマで企画しているのでしょうか?

笠置氏:
「自社の採用イベント」として開催してしまうと「弊社で働きたい」と思ってくださる方しか集まりません。それはもちろんありがたいことではありますが、そうすると、母集団が偏ってしまいます。
そのため、エンジニアやデザイナー、総合職の人材がどのようにキャリア形成をしていくのか、スキルアップをしていくのか、”自社”ではなく”個”に向けたテーマでイベントを開催しています。

人材の大切さを理解してこその「採用オーナー制」

ferret:
採用をしていく中で、成功体験などがあれば教えてください。

笠置氏:
採用オーナーが30人近くいるのですが、スカウト返信率がすごく高い人から、そのノウハウを他の採用オーナーに共有しています。スカウトの返信率が高い人と、低い人、はじめてのスカウトを含めて「スカウトもくもく会」を開催しました。

もくもく会の中でスカウト返信率の高いオーナーが、返信率の低いオーナーの添削をお願いして打ち始めたところ、すごく返信率が高くなることがありました。

ferret:
オーナー同士がノウハウを共有することによって、全体的にスカウト率が上がったわけですね。

笠置氏:
そうですね。また、アドバイス自体も経験している人にやってもらった方がいいと思っています。スカウトを打っている本数は人事よりも、現場の方が圧倒的に多いため、成功体験も各オーナーが持っているわけで。だからこそリアルな視点で「この職種の求人を出すときははうちの会社の訴求はこうした方がいいよ」といった説得力があり且つ効果的なアドバイスができるわけです。

ferret:
採用オーナーの方々は、スカウト以外でも、実際に面接に出る機会などもあるかと思います。メイン業務ではない分、オーナーが面接に不慣れなことも多いかと思いますが、初めて面接を担当するオーナーに対して気をつけている点などはありますか。

笠置氏:
部長クラスの人たちは採用のプロではないですが、人を見ることは長けています。マネジメントをされてきた方々ですので。
とはいえ、一緒に面接に入ることもあります。その場合、面談の簡単な流れなどもお伝えしますが、どちらかというと、「面接する」のではなく反対に「見られてる認識」も持ってもらえるように、意識や目線合わせをしています。
その上で、人事も面接に何回かご一緒させていただいて、オーナー自身がリードをとれるようになればお任せします。

ferret:
そもそものスカウトを打つチャネルの見極めも人事の方がされているのですか。

笠置氏:
そうですね。基本全部契約や掲載においての費用面は人事が持っているので、そこは人事で一括しています。
ただ、新規チャネルの検討は人事側からの提案だけでなく、採用オーナーから逆提案いただくこともあります。例えば採用オーナーが外部のイベントに参加したときに、他企業の採用担当からお勧めされた媒体を「ぜひ一度使ってみたい」と紹介されました。

ferret:
ちなみに現在人事は何人いらっしゃるんですか?

笠置氏:
組織が大きくなってきているため、人事の担当も細分化しています。採用担当においては、私を含めて、採用メインのメンバーが4人います。あとは他業務と兼務し採用に関わっている人も2名ほどいますね。

ferret:
 御社では毎月多くの応募があり、採用がとても上手くいっているような気がします。

笠置氏:
チャネルを増やしているので、たしかに応募数は集まりやすくなっていると思います。

ferret:
お話を聞いていて思ったのが、現在海外では当たり前になってきていることなのですが、企業が自社に応募してくれた求職者に対して、採用選考のプロセスに自社らしい工夫をしたり、アフターフォローをすることで、求職者に「(採用の合否に限らず)この企業を受けてよかった」と思わせる体験をCandidate Experience(以下CX)というのですが、まさに貴社の選考フローもそれじゃないかと思います。

参照|求職者に感動を与える体験を 「Candidate Experience」とは

笠置氏:
そういった取り組みがあるんですね。たしかにWantedlyさんのように、まずは「話を聞きたい」から入る採用チャネルは世の中的に多いと思うのですが、そういった方々に私もお会いすると、会社研究みたいなコミュニケーションが多くて。

中にはお話の中で「今うちで希望しているポジションとは別に、このポジションはどうでしょう」と、適正を見極めてより弊社で輝いてもらえるよう、あえて違う部署を紹介することもありますね。

それができるのは、弊社の採用オーナー全員が、同じ採用会議にも出ているので、他の部署がどういう人を求めているのかを把握しているからですね。だからこそ、その場で紹介することが可能なのです。

これからも「採用オーナーのパートナーであり続けたい」

ferret:全社で採用するにあたり、改めて採用人事のミッションはなんでしょうか。今後の採用の展望もあれば教えてください。

笠置氏:
個人的には常に採用オーナーのパートナーであり続けることだと思っています
一人の採用オーナーが半年間採用に対して、モチベーションを高く活動持し続けることは大変なことだと思います。

「この人とどうしても一緒に働きたいんだよ」と現場の人が言ったときに、「成功させましょう!」とパッションを伝え、採用オーナーのベストパートナーであり続けることがすごく大事だと思っています
事業部が多くなるにつれて、採用のポジションも増えています。

今後は、各採用オーナーごとにチームができていって、そこの採用に対して、全力を尽くせるような体制ができたらと考えています。

Find Job!×ferret 終了と移行のお知らせ

2019-09-17 14:38

いつも「Find Job!×ferret」をご愛読いただき誠にありがとうございます。 この度、Find Job!×ferretは9/30(月)で終了することとなりました。

『従業員体験(Employee Experience)』とは

2019-08-21 10:44

従業員体験( Employee Experience 以下:EX)とは、文字通り従業員がその企業で働くことで得られる体験のことです。具体的には、オフィス環境や福利厚生、オンボーディングなど、従業員が企業で働く上で欠くことのできない直接的要因が多く該当します。 このEXが注目されるようになったのは、IT技術の普及により、労働環境のみえる化ができ、今まで暗黙の了解とされていた長時間残業や社内環境が明るみになったことや、採用難による離職率の低下を防ぐことが多くの企業にとって課題となってきたという背景があります。また、転職が当たり前の市場になりつつあるからこそ、従業員が自社で働く理由を見出す必要が出てきたということもあります。 この体験を通じて、企業は従業員の満足度を高めることを目指しています。従業員の満足度を高めることで、先ほど述べたようにエンゲージメントの向上による離職率の低下や日々の業務の生産性向上に貢献することができるのです。

中途入社予定者フォローの必要性と3つの例

2019-08-19 18:16

内定後から入社までの期間をどのように過ごすかで、その人の入社に対する熱量は大きく変化します。実際に、多くの企業は新卒の内定者に対し、懇親会や内定式といった様々なイベントを企画されています。 しかし、内定をもらった中途入社の方に対し、そのような機会を設けることはあまりありません。そこで今回は、中途入社予定者に対する入社までのフォローの必要性と具体例を紹介します。

『エバンジェリスト』とは

2019-08-16 10:26

エバンジェリストとは、IT業界においてテクニカルエバンジェリストとも呼ばれ、テクノロジーの情報や自社サービスのことを、社内外に分かりやすく説明する、エンジニアとマーケターを合わせたような職種です。もともとエバンジェリストとは、キリスト教における福音主義(evangelicalism)からきており、福音(良い音信)を伝える人を指します。

『アルムナイ』とは

2019-08-08 09:30

アルムナイとは卒業生や同級生を意味する英単語「alumnus」の複数形「alumni」が語源になっています。ビジネス界においては、企業から卒業した人、つまり退職者のことを指します。 海外では主流の考え方の1つで、ハーバード大学、オックスフォード大学などはアルムナイに向けて、イベントを企画したり、アルムナイしか買うことのできないグッズを制作したりしています。 外資系コンサルティング会社アクセンチュアでは、アルムナイに対する様々な制度を設けています。具体的にはインターネット上にクローズドのコミュニティを作り、そこで情報共有を行ったり、スキル・人脈をシェアしたりすることができます。所謂オンラインサロンのような役割を担っているのです。


人気記事ランキング

© Basic Inc. All Rights Reserved.